2017年9月27日水曜日

森友問題関連の音声データの内容

安倍首相は9月28日召集の臨時国会の冒頭で、衆院解散に踏み切るとみられています。北朝鮮問題で国内が大揺れの中で断行されるとみられる解散は「森友・加計疑惑」の追求を回避するための自己保身ではないか、と野党などから疑問視する声も。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で、元全国紙の社会部記者だった新 恭さんは、今回の解散発言について安倍首相が「『「禊(みそぎ)は済ませた』と開き直る腹積もりだ」と断言。関西テレビが独自に得た、森友問題関連の音声データの内容をもとに、解散総選挙でも「安倍首相による権力の私物化」の事実を風化させてはならないと警鐘を鳴らしています。

森友・国有地値下げの真相を物語る新音声データ

よくもまぁ、下心の見え透いた策をとれるものだ。安倍首相は臨時国会の冒頭で衆議院を解散するつもりらしい。

あれだけ、北朝鮮ミサイルの脅威を煽っておきながら、そのさなかに、国会を閉じてしまうのだ。

森友、加計疑惑の追及が再びはじまり、その影響で10月の三選挙区衆院補選に敗北すれば、安倍首相は退陣に追い込まれかねない。そんな事態を避けるため、野党陣営の臨戦態勢が整わない今のうちに解散してしまえ、ということだろう。

森友、加計疑惑を追及するメインステージを解散によって失うとなれば、新聞、テレビなど大メディアに期待したいところだが、それも、選挙が近づくと過剰なまでに報道の自主規制がはじまる。

ならば司法はどうか。これもほとんど、やる気が感じられない。

たとえば、森友学園事件について、大阪地検特捜部は、籠池理事長夫妻の犯罪に矮小化し、国有地払い下げをめぐる財務省の不正疑惑には目をつぶろうとしている。財務省や近畿財務局にガサ入れさえしないのが、そのなによりの証拠だ。

だが、コトの本質は、いうまでもなく、安倍首相夫人が名誉校長をつとめていた小学校の建設のために、財務省が国有地を不当に安い価格で払い下げたかどうかである。

財務省は8億1900万円もの値引きについて、地下埋設物や廃棄物の撤去費用がそれだけかかるからだと説明してきたが、実は森友学園側の要望に沿って、ほとんどタダ同然になるよう、金額をつくりあげたことが、わかってきた。

決め手になるのは、2つの音声データだ。一つは森友学園の籠池夫妻が2016年3月15日、財務省に赴き、理財局の田村嘉啓国有財産審理室長と面会したときの録音。もう一つは、関西テレビが独自入手し9月11日に放送したばかりの新しい音声記録である。

今年9月14日に開かれた民進党の森友学園問題プロジェクトチームの会合で、新しい音声データが再生されたが、出席した財務省の面々は「捜査中なのでコメントを控える」と、これまでの隠ぺい姿勢を崩さなかった。

関西テレビによると、録音された時期は2016年3月下旬。籠池夫妻が理財局の田村室長と面会し何日か経過した時点とみられる。

そこで、経過をわかりやすくするため、まず簡単に田村室長と籠池夫妻の面会録音の内容をおさらいしておこう。

籠池夫妻は、当時賃借していた豊中市の小学校建設用地から新たにゴミが見つかったと主張して、財務省に乗り込み、地代値下げを直接、田村室長に談判した。

その場で、田村室長は「本件のように特例的なものは、財務局から相談が来る。土地を売る値段よりも、土地を改良する価格の方が高いときに、売るかどうかは、別の判断がありますが、われわれ、ここまでさせていただいて…」と語っている。

この時点で、国側には土地を「賃貸」から「売却」に変更する意思があったと推察できる。しかも、廃棄物の撤去費より少しでも高い価格なら土地を売ることができるというニュアンスをにじませている。

国が負担した廃棄物の撤去費は1億3176万円。森友学園がその後に国から買った土地の価格が1億3400万円。なんとも“芸術的”な取引に疑念が集中したのは周知のとおりだ。

籠池夫妻と田村室長の面談以降、話は急展開する。

9日後の3月24日、森友学園から近畿財務局に「土地を購入したい」と申し入れがあった。そこで、大阪航空局が新たに見つかったとされるゴミの処分費用を8億1900万円と見積もって、その分を評価額9億5300万円から値引きし、6月20日に売買契約が締結されたのである。

関西テレビが入手したのは、おそらく森友学園が土地購入希望を申し出た後の録音データであろう。土地価格をどうするかについて話し合われている。

登場人物は、近畿財務局の池田靖国有財産統括官(当時)ら複数の職員、それに工事業者、籠池理事長(当時)夫妻、学園側代理人弁護士である。場所はこどもたちの声が聞こえるところから判断して、塚本幼稚園のようだ。

まず、籠池夫妻や代理人弁護士が値引きを要求し、その思いをぶちまけた。

諄子氏「絶対あれはタダで分けてほしい。私らは授業料を安くしてあげたい」

籠池氏「きれいになってへんかったんや。棟上げの時に首相夫人も来られるのにどうするの、僕の顔は」

学園の代理人弁護士「死ぬ気で値段を下げるよう取り組んでほしい。知恵を絞ってほしい。下げる理屈を考えないといけない」

「下げる理屈」というキーワードが出ている。これに対して、近畿財務局側は次のように話を合わせる。

財務局職員「3メートルまで掘ってます。その下のゴミは国が知らなかったので、そこはきっちりやる必要があるでしょうと…そういうストーリーはイメージしてるんです」

3メートルの深さまでは国が廃棄物を確認し、撤去費用を負担した。その後、校舎建設のため9メートルの深さまで杭打ちをしたら、新たなゴミが見つかったというのが森友側の主張だった。

むしろ抵抗を感じたようなのは工事業者だ。

工事業者「ちょっと待ってください。そこちょっと語弊があります。3メートル下から(ゴミが)出てきたかどうかわからないですとお伝えしている。認識を統一したほうがいいのであれば合わさせていただきますけども…」

ここからは、工事業者を財務局が説得するような流れになっていく。

池田統括官「資料を調整する中でどういう整理をするか、協議させていただけるならありがたいです」

工事業者「3メートル下からはそんなにたくさんは出てきてない」

財務局職員「混在と…9メートルまでの範囲で」

工事業者「9メートルは分からないですけどね」

学園代理人弁護士「そこはもう言葉遊びかも知れないですけども、9メートルのところまでガラがある可能性を否定できますか、否定できないでしょ。そういう話なんです」

学園と近畿財務局からの説得に業者側がついに折れた。

工事業者「その辺はうまくコントロールしてもらえるんでしたら、われわれは資料を提供させていただきますんで」

それでも、国側はやはり多少の後ろめたさがあるのだろう、こう念を押した。

財務局職員「虚偽のないようにというのが大事なので、混在してると。ある程度3メートル以下の所にもあると。ゼロじゃないということです、ね」

むりやり業者を言いくるめる。

工事業者「あると思います」

財務局職員「その辺のところでつくりたい」

学園代理人弁護士「責任問題に発展しないようにがんばっていただけると信頼している。半分は我々のために。半分はご自身のために頑張ってください」

下手をすると、責任問題に発展しかねないという共通認識は、あったようだ。
つまり、悪巧みなのである。

地下9メートルにこだわるのは、その範囲の埋設物やゴミの撤去費を算出すれば8億円を超える額になるからだ。

その分を値引きすることで、土地の売価がちょうど、国が負担した地下埋設物撤去費1億3176万円を少々上回る程度の金額になる。こうして1億3400万円という払い下げ価格が決定したのだ。

この会合に至るまでの経過を整理しておこう。2015年7月から12月にかけて、地下埋設物の撤去工事が行われ、同年9月4日に中道組、近畿財務局、キアラ設計、大阪航空局が打ち合わせをした。

そのさい、廃棄物をすべて用地の外に搬出すれば地価を上回る費用がかかる恐れがあることが問題となったため、建設工事に支障のあるコンクリートや土管などは撤去するが、それ以外の廃棄物は埋め戻して「場内処分」にすると決まった。

その費用1億3176万円は、着工を急ぐ森友学園が立て替え払いし、あとで国が同額を返還するという約束が取り交わされた。

この四者会合翌日の2015年9月5日、安倍昭恵夫人が新設小学校の名誉校長に就任。それ以降、籠池氏は俄然、強気になる。

「校舎の杭打ち工事中に新たな地下埋設物が見つかった」として、金銭面でのさらなる負担減を求めるための行動をはじめたわけだが、新たなゴミが出てきたのではなく、埋め戻したゴミの問題を交渉のネタにしたのである。

財務省理財局に田村室長を訪ねたさい、真っ先に口をついて出た以下の発言がそれを物語っている。

「今回お邪魔した主たる目的は何かというと、近畿財務局の方が、ガラとか、有害物質が入っている土を運ばないで場内に埋め戻してほしいなんていうようなことが発生したわけです」

この財務省訪問を契機に近畿財務局の態度が大きく変わったことは間違いない。

「総理案件」としてこの件を重視した本省からの指示があったからだろう。

値引きの根拠や資料を求める野党の追及に、佐川理財局長(当時)は「関係する書類は全て廃棄した」「パソコンのデータも消去されて復元できない」などと、まともに答弁することを一貫して拒否する姿勢をとり続けた。

「真摯に説明責任を果たす」と約束した6月19日の首相会見とは裏腹に、野党の臨時国会開会要求に自民党はなかなか応じず、ようやく9月28日開会と決まったとたん、冒頭解散するとの報道である。

「権力の私物化」が疑われる森友・加計問題を帳消しにするため、解散総選挙で一定の当選者数を確保し「禊(みそぎ)は済ませた」と開き直るのが安倍首相の腹の内に違いない。

メディアではしばしば、野党がだらしないから自民批判票の行き場がないとコメントされる。しかし、離党ドミノで民進党が存立の危機にあるからこそ、共産党との選挙協力を含む野党共闘が実現する可能性はむしろ高まった。

専横ぶりが目に余る今の政権ではだめだと思うなら、野党統一候補に票を投じるため投票所に足を運ぶのも一つの方法だ。「禊は済ませた」と言わせないためには、ぼやいてばかりいても仕方がない。