2017年5月31日水曜日

なぜか菅官房長官は国連からの書簡に激怒して強く抗議

国際組織犯罪防止条約(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約)を締結するために必須とされた共謀罪ですが、なぜか菅官房長官は国連からの書簡に激怒して強く抗議しました。詳細は以下から。

◆共謀罪の目的は「国際組織犯罪防止条約」締結のはずが…
政府が共謀罪の成立を急ぐ根拠として最重視している国際組織犯罪防止条約(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約)。これはいわゆる国連条約のひとつであり、2000年11月15日、国際連合総会において採択された条約です。
しかし、人権状況などを調査・監視する国連特別報告者が共謀罪にはプライバシーや表現の自由を制約するおそれがあるとし、4つの質問を行った安倍首相宛の書簡に対して菅官房長官は「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と発言しました。
国連条約である国際組織犯罪防止条約を締結するために必須とし、国内法の概念を全く変質させてしまう重要法案にも関わらず、ろくな審議も行わないまま委員会で強行採決までしておきながら、実際に当の国連からの指摘や質問に対してなんら回答も行わず、「強く抗議」するとは全く意味不明です。
本当に国際組織犯罪防止条約を締結したいのであれば、国連からの指摘を真摯に受け止め、質問に誠実に回答するのが当然です。書簡内で「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と指摘され、「法案の成立を急いでいるため、十分に公の議論がされておらず、人権に有害な影響を及ぼす危険性がある」と議論の不十分さが懸念されている以上、法案を差し戻して公の議論を十分に行い、プライバシーや表現の自由が制約されないように条文の改正を行うのが条約締結のための本筋のはず。
しかし菅官房長官は「プライバシーの権利や表現の自由などを不当に制約する恣意的運用がなされるということはまったく当たらない」という「菅官房長官語」を振りかざして強弁するのみで、恣意的運用がなされないという法的根拠は皆無です。
公開書簡を送ったジョセフ・カナタチ特別報告者はロイター通信へのEメールの中で菅官房長官の反論を「怒っているだけで中身がない」と断じた上で「日本政府のこうした振る舞いと、欠陥のある法律の成立を無理に押し通そうとする姿勢は絶対に正当化できるものではない」としています。
この書簡に対する京都大学の高山佳奈子教授らの指摘は以下の動画から見ることができます。
◆菅官房長官の特別報告者への大きな勘違い
さらに菅官房長官は「特別報告者という立場は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」としていますが、これは大きな勘違い。
「特別報告者(Special Rapporteur)」とは国連人権委員会が設ける言論の自由、拷問、食糧確保の権利、教育の権利などのような特定の人権のテーマや、特定の国家・地域の状況に関する作業部会において、国や地域を訪問して調査、監視、助言、報告書の公開といった「特別手続(Special Procedures)」を実行するために国連人権委員会委員長が任命する専門家のこと。
特別報告者は人権高等弁務官事務所から支援を受けて無給で、いずれの国家又は地域からも独立した専門家として活動する存在であり、決して単なる個人の意見を発しているわけではありません。
安倍政権では安倍昭恵夫人を私人であると閣議決定したり、安倍首相さえも自民党総裁として私人の立場で改憲日程を示すなど、都合に合わせてころころと公人と私人の立場を使い分ける詭弁がまかり通っています。
同様の詭弁が海外にも通用し、あまつさえ国連の特別報告者を単なる個人呼ばわりしてまともに相手にされると思っているのであれば、世界に向けて大恥を晒してしまったことになります。
また、菅官房長官は「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した。法案は187の国と地域が締結する条約の締結に必要な国内法整備だ」などと反論していますが、公開書簡で指摘され、質問された以上は正々堂々と指摘に反論し、質問に答えるのがまともな国家のあり得べき姿です。
◆書簡に回答しないなら何のため、誰のための共謀罪か
国際組織犯罪防止条約という国連条約の締結に必要だとする共謀罪が、当の国連からプライバシーや表現の自由の制約の懸念を示されている以上、これを無視どころか抗議まですることが日本の国益に適わないことは火を見るよりも明らかです。
また、この書簡に誠実に対応しないのであれば、政府の述べる「国際組織犯罪防止条約の締結に共謀罪が必須」という理屈は完全に崩壊することにもなり、これまでの説明が全部嘘だったということにもなります。もちろん「共謀罪はテロ対策である」という安倍首相の発言も既に嘘であることが判明している以上、これも嘘だったという結果になっても全く不思議ではありません。
であれば、共謀罪はいったい何のため、誰のために制定されるのでしょうか?