2017年5月31日水曜日

政治家の汚職や権力の私物化に対しては適用対象となっていないことが指摘されました

共謀罪が一般市民にも適用されることが明言される一方、政治家の汚職や権力の私物化に対しては適用対象となっていないことが指摘されました。詳細は以下から。
◆「テロ等準備罪」ではないと自民党が認める
共謀罪が「テロ等準備罪」ではないと、共謀罪の取りまとめを行っている自民党法務部会長の古川俊治議員が明言したことは先日BUZZAP!でもお伝えしたとおり。
また、この共謀罪ではローンウルフ型と呼ばれる単独犯によるテロ計画や単発的な集団のテロが射程に入っておらず、実際問題テロ対策としては大き過ぎる穴が存在しています。秋葉原無差別殺傷事件のように、ひとりでトラックとナイフを用いてテロを起こそうと考える相手には完全に無力となります。
◆一般市民も対象となると国会で明言
安倍首相の「一般市民が対象となることはありえない」という印象操作も、金田法相の「一般市民は、『組織的犯罪集団』という定義に入らないということでいいのか」との国会での質問に「団体の性質が一変したと認められなければ、組織的犯罪集団と認められることはない」と回答したこと、法務省が「正当に活動する団体が犯罪を行う団体に一変したと認められる場合は、処罰の対象になる」と公式見解を出したことから嘘と判明しました。
その後も4月21日に盛山正仁法務副大臣が民進党の逢坂誠二議員の「組織的犯罪集団と関わりがない人でも、嫌疑が生じた段階では捜査の対象となる可能性を否定できないのでは」と質問に対して「一般の人が対象にならないということはないが、ボリュームは大変限られたものになる」と答え、一般市民が対象になる可能性があることを改めて認めています。
対象となる「犯罪」についても277(300以上だとの異論あり)と極めて広範に及んでおり、反対声明を出した日弁連の海渡雄一弁護士によると、例えばブラック企業を批判するビラを撒こうとするだけでも、法案の条文上「組織的信用毀損罪の共謀罪」になり得るとしています。
これだけではなく対象犯罪には著作権法違反や種苗法違反なども盛り込まれており、「同人誌作ろう」や「キノコ狩り行こう」といった日常的な行為を計画し、準備するだけで一般市民に共謀罪が適用されることが条文から明らかになっています。
このように、共謀罪がテロ対策のために必須だというのは印象操作に過ぎず、一般市民が対象とならないというのも条文から大嘘であることが既に判明しています。しかも、その対象は極めて広範で曖昧。捜査当局が恣意的に運用して一般市民を監視・捜査する事ができるようになっているのです。
◆政治家の汚職や権力の私物化に対してはガバガバ
ですが、対象とならないはずの一般市民を強く規制するこの共謀罪は、政治家の汚職や権力の私物化、そして企業による経済犯罪が対象犯罪から注意深く除かれていることが明らかにされました。風営法問題に尽力したことでも知られる京都大学の高山佳奈子教授が4月25日に共謀罪に関する参考人招致で答弁しています。
高山教授は共謀罪の対象犯罪から公職選挙法政治資金規正法政党助成法がすべて除外されていることを指摘。つまりは汚職の相談をして「こんにゃく」を準備していたとしても、実際に渡さなければ対象とはならないということ。
森友学園問題を見れば分かるように、とある組織が何らかの便宜を求めて政治家に働きかけることは見逃してはならない組織犯罪のはず。キノコ狩りという個人の趣味レベルの微罪が対象犯罪であるにも関わらず、国家や地方自治体を動かす政治家の関与する公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法が除外されていることはおいそれと納得できる話ではありません。
また、森友学園に関して財務省が契約文書などを隠蔽し、一部については破棄したと答弁している事が大きな問題となっていますが、国民の資産でもある公文書を隠蔽、破棄する公用文書電磁的記録の毀棄罪も「丁寧に」除外されているきめ細かさには驚かされます。
◆警察・検察の職権乱用も対象犯罪から除外
また、同時に警察や検察などの職権乱用に対する特別公務員職権濫用罪暴行陵額罪も権力を盾にした極めて重い犯罪ながら除外されている事も明らかにしました。
一般市民にとっては、いったん捜査当局によって捜査対象となり、逮捕・拘留された場合に原状復帰までに時間がかかることはBUZZAP!が追い続けてきたClub NOONを巡る訴訟を見れば極めて明白。例えば「無許可で客を踊らせた」として風営法違反容疑で摘発されたNOON元経営者の金光正年さんは最高裁で無罪を勝ち取るまでに4年以上掛かっています。
◆企業による経済犯罪も軒並み除外
政治家、捜査当局に続いて、企業などによる経済犯罪も共謀罪の対象犯罪からは省かれています。高山教授は一般に「商業賄賂罪」と呼ばれて諸外国で規制される流れとなっている、会社法金融商品取引法商品先物取引法投資信託投資法人法医薬品医療機器法労働安全衛生法貸金業法資産流動化法仲裁法一般社団財団法などの収賄罪が対象犯罪から除外されていることを指摘。さらには基本的に組織的な違反となる酒税法石油税法違反も除外されています。
高山教授の参考人招致での実際の答弁動画は以下から。
◆結局のところ共謀罪って何のための法律?
繰り返しになりますが、この共謀罪が安倍首相らが当初必要だと主張した理由である「テロ等準備罪」ではないことは既に自民党法務部会長によって明言されており、国会での答弁から「一般市民が対象となることはありえない」という言葉も嘘と判明しました。
それどころか、対象犯罪とならないのは政治家の汚職や公権力の私物化、警察や検察などの捜査当局による職権乱用、企業の経済犯罪など。つまり、共謀罪が監視し、言動を強く規制して計画・準備段階から犯罪を取り締まるメインターゲットは一般市民ということになります。
また、4月21日には衆院法務委員会で、質問に答えられなくなった金田法相の代わりに法務省の林真琴刑事局長が代わりに回答しようとする場面があり、その際野党理事らが鈴木淳司委員長の席に集まって対応を協議したところ、自民党の土屋正忠理事が「あれは、テロ等準備行為じゃねえか!」とヤジを飛ばした事件がありました。
野党議員が国会内で相談しているだけで「テロ等準備行為」であると自民党議員が認識するのであれば、共謀罪が成立した際にいったいどのような運用がされるのか、決して軽く見ることはできません。

再び繰り返しになりますが、一般市民にとっては有罪判決が下されなかったとしても逮捕され、半月以上拘留されるだけでも下手をすれば仕事を解雇され周囲から悪評を立てられるなど、生活に極めて大きな支障をきたします。共謀罪がこのまま成立すれば日本社会で言論の萎縮が起こるのは必至です。