2019年1月13日日曜日

やりたいことは

“やりたいことはいずれできると思ってきましたが、それは間違いで、すぐにも行動を起こさないと、機会は永遠に失われるかもしれない、”

「早く終わって欲しい」イコール「早く死んで欲しい」

“介護の辛いところは「早く終わって欲しい」イコール「早く死んで欲しい」になってしまうので、それを考えるだけで自己嫌悪になるところ。でも介護施設に預ければ、その辛さの大半は終わる。”

2019年1月10日木曜日

生活力を考えた。

生活力を考えた。

猫の写真があって、『ご飯まだ』と書いてある。
別の写真には『お昼まだ食べてないよ』と書いてある。
猫はかわいいというだけで餌を要求しているし、それで当然と思われている。
これは子供も同じだ。

時間になったら、またはそれ以外でもおなかがすいたら、
何か食べさせてと食卓のテーブルに座って母親の給仕を待っていたりする。
たいていの母親は食べさせるのは自分の責任と考えているし
子供はかわいいので、または自己愛の延長物であるので、かなりの程度に尽くす。
子供はそれを当たり前と思って大きくなる。

男性の場合は、家を出て結婚すれば、妻は母親の代わりであって、
食事をはじめとして家事全般のお世話をするものと思っている場合がある。
猫や子供のようにかわいいならそれでいいのだが
たいていの男性はそれほどかわいくないので、女性の献身にも限度がある。
ただ、一家の主な働き手が男で、専業主婦が女という場合には、
かわいいという動機ではなくて、役割分担という動機で、
そのような制度だから、女が男のお世話をしている。

ペットがなくなるとペットロスというくらいなのだが、
退職後の男性が死亡しても、妻はロスに苦しまないケースが多い。
逆に、妻が先になくなると、夫はロスに苦しむ。
精神的にでもあるし、身の回りのお世話という点でも、苦しむ。

女性の場合は、娘時代が終われば、子供にしても夫にしても、
自分がお世話をする立場になるので、
のんびりしていた時代は終わりである。
朝早く起きてお弁当の支度をしたりする。
最近では夫の収入が少ないので妻も働くのだが
夫はお世話されるものと信じているし、夫の親も、
息子の嫁は、お世話してくれるものだと信じているので、
大変やりにくい。

退職後に、もう収入もないし、愛もないし、かわいげもないので、
お世話もこれきりだと離婚または別居する例もある。

猫に生活力がないものなのだろうか。あるのだろうか。
野良猫はどうかして生きているし。




2018年12月25日火曜日

2018年12月23日日曜日

2018年12月19日水曜日

クレーム(断るスキル)

クレーム(断るスキル)
みなさんは、クレームにどう応じて良いか困ったことはありませんか? 病院、学校、役所などの公的機関の現場では特に、「自分だけ待たさないで」と過剰に公平扱いを求めたり、逆に「そこを何とかお願いできませんか?」と気軽に特別扱いを求める患者、保護者、利用者の方が目立つようです。彼らには、どんな思いがあるのでしょうか? どう応じるのが正解でしょうか?

クレームの心理とその対応を整理して、断るスキルをいっしょに考えてみましょう。

なぜクレームするの?―クレームの心理
(1)謝ってほしいだけ

1ケース目は、「お宅のラーメン買ったんだけど、焼き豚が入ってない」「写真にはちゃんと入っているのに」とのクレームです。佐倉は、「パッケージの写真はあくまで調理例です」「通常はみなさん、分かって購入されてますけど」ととっさに答えてしまいます。すると、客は「通常?」「つまりおれは通常じゃないってことか?」「バカって言いたいの?」と怒り出したのでした。

1つ目は、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」という理解や謝罪を求める心理です。そこには、確かに勘違いをしてしまったのは自分だけど、そもそも客に勘違いをさせる会社も悪いという思いがあります。特に、すぐにひどい目に遭ったと思い込みやすい人(妄想性パーソナリティ)や、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)に多いです。

(2)話がしたいだけ
2ケース目は、「新しいラーメンの味がおかしい」「これね、絶対に変」「私の舌がおかしいってこと?」「私はまだボケてなんかいませんよ」「あなたご自分で食べてみた、このラーメン?」「あなたお名前は?」との高齢の女性らしき人からのクレームです。

2つ目は、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」という暇つぶしやお節介をしたがる心理です。そこには、「正論を言いたい」「お説教をしたい」「世直しをしたい」という思いもあります。よって、その特徴は、「態度が悪い」「説明が分かりにくい」などにも及び、内容が抽象的であることです。特に、最近目立つのは、高齢者のクレームです。クレームを付けること自体が目的化してしまい、解決することが目的にはなっていないことがあります。そして、しつこくて時間がかかります。その理由として、彼らが、定年退職の後や、子どもが成人して家を出た後に、ほかにすることがなく、話し相手がいなくて、エネルギーや時間を持て余していることが考えられます。

(3)得したいだけ
3ケース目は、「おまえんとこのらっきょうに虫が入ってやがったんだよ」「どうすんだ!え!」「責任とれ!」との怒気を帯びたクレームです。そして、訪問謝罪の上、謝罪金を要求してきます。

3つ目は、「得したい」「コントロールしたい」という優遇やうさ晴らしを求める心理です。この特徴は、金品の要求から、役所で「特例として認めてください」との特別扱い、さらには病院で「あの研修医をクビにしてください」、学校で「いじめ加害者にもっとペナルティを課してください」との無理難題まであります。2つ目の「話がしたいだけ」の心理とは対照的に、言葉尻を捉えて圧をかけてくるなど目的のために手段を選ばず、短期戦を望む傾向があります。

どう応じれば良いの?―クレーム対応
佐倉は、毎回クレームに戸惑いながらも、先輩の篠崎からその対応を教わっていきます。その極意を3つのステップに整理してみましょう。

(1)寄り添うー親身
1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームに対して、篠崎は佐倉から引き継いで、すぐさま「誠に申し訳ございません」「鋭いご高察、感服致しました」「私もどうかと思っておりました」「単身赴任?」「私も妻と別居中」「一人暮らしは骨身に染みております」「お互い、逆境にめげずにがんばりましょう」と丁寧に答えます。

1つ目のステップは、相手の気持ちに寄り添う、つまり親身になることです。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。

a. 謝る

1つ目は、まず謝ることです。ただし、平謝りするのではないです。それをやってしまうと、完全に責任をとることを認めることになります。そうではなくて、「お手間」「ご不便」「ご不快」に限定して謝ることです。そうすると、責任を問われても、「お手間をとらせたことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです」「ご要望の点についてはこれから詳しくお聞きします」と返せます。

それでも、「責任とれ!」「誠意を見せろ!」と言い続ける相手は、悪質であることが分かります。つまり、まずこちらが先に謝って相手の出方をうかがうことで、悪質かどうかが分かります。そして、今後のこちらの出方の参考になります。

b. 共感する

2つ目は、共感することです。例えば、「ごもっとも」「お察しします」「なるほど」「そうだったのですね」「おつらいですね」「ご心配になりますよね」などの気持ちを汲んだ言葉かけをすることです。脳科学的な男女差で言うと、女性の方がより共感的な傾向があるので、相手が女性の場合は、よりこの共感に重きを置き、話をよく聞いて時間をかけると良いでしょう。

c. 理解を示す

3つ目は、理解を示すことです。例えば、「○○というご負担(ご心配)があったのですね」と具体的にどういうダメージが物理的にも心理的にもあったのかに触れて、相手のことを良く理解していることを伝えることです。脳科学的な男女差で言うと、男性の方がより理屈っぽい傾向にあるので、相手が男性の場合は理解を示すことにより重きを置くと良いでしょう。

d. 謝って済む問題にする

このように、謝る、共感する、理解を示すという3つのポイントを押さえた親身のステップをまず踏むと、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、謝って済む問題に持ち込むことです。逆にこれを最初にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には謝って済む問題ではなくなります。書面の対応を求められるなど、腹いせや嫌がらせに発展するリスクが高まります。

また、親身のステップで言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、謝ったことにはならないからです。

e. 病院へのクレームで応用すると

この対応を病院でよくあるクレームに応用してみましょう。それは、予約制の外来で患者を待たせた場合です。従来は、患者から「いつまで待たせるの?」と言われたら、医療関係者は「順番でお呼びしていますから」「緊急の患者様が優先になりますから」といきなり一般論を言って、素っ気なく答えていました。

そうではなく、患者から言ってこなくても、まずこちらから挨拶代わりに「お待たせしてすいません」と適宜伝えることです。そして、10分以上待たせると「○分以上お待たせして」を添え、「具合が悪くなりませんでしたか?」と聞くとより好ましいでしょう。

30分以上待たせた場合は、声を潜めて、泣きそうな顔をして、申し訳なさを示すのも好ましいです(レッドフェイス効果)。この対応は、診察する医師がするとより良いです。すると、患者は、「しょうがないですよね」「先生も大変ですよね」と理解を示してくれます。

f. 親身のステップの時間は?

ただし、クレーム対応の場合の親身の時間は、最初の15~30分以内とします。なぜなら、ほとんどのクレームは、15分~30分以内でだいたいのことが把握できて親身に対応できるからです。ポイントは、この時間内で事態を収拾できるかどうかです。

1~2時間以上だらだらとやらないことです。よって、15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「すいません。今ここではこれ以上の対応が難しいです」「このアンケート用紙にご要望をお書きください」「とても込み入ったお話に思われますので」「大事なお話なので」「のちに文書でお返事するか、もう一度お話を伺う日程の調整を行います」「どちらが良いですか?」と言い、切り上げます。そして、以下のようなアンケート用紙に記入してもらい、次のステップに進みます。

アンケートは、提案書というタイトルで、内容と解決案を具体的に書くようにします。要望書とはしないです。要望ではなく、あくまで提案という認識を持ってもらうためです。また、書いてもらうことで、相手に客観視を促す狙いもあります。

ちなみに、電話対応の場合も基本的に窓口対応と同じです。15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「誠に申し訳ございません。電話ではこちらからうまくご説明するのが難しいようです」「アンケート用紙をファックスか郵送でお送りします」と伝えて、後日の文書のお返事か、話し合いの日程調整を行います。

(2)動じないー受け身

2ケース目の新商品のラーメンの味がおかしいとのクレームに対して、実直な佐倉は素直に「実は(ラーメンは)まだ(食べていない)です」「申し訳ございません」「(名前は)佐倉です」と答えます。そして、親身になって話を聞き続けます。その対応を受けて、高齢の女性は、「正直な方ね」「久しぶりに誠実そうな方と話せて、何だかほっとした」と感心するのでした。

2つ目のステップは、揺さぶられても動じない、つまり受け身です。親身になると、クレームがエスカレートするリスクに触れました。だから、ここでは、それでも柔道の受け身のように動じない。あたふたしないことです。あたふたすると、「頼りない」「弱そう」とつけ込まれます。ただし、多くのケースでは、親身のステップを最初に経ていると、相手が友好的になり受け身がしやすくなります。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。

a. 時間をかける

1つ目は、時間をかけることです。例えば、「何とかなりませんか?」と食い下がっている場合、一般論を盾に「規則です」「期限は守ってください」とすぐに突っぱねないことです。つまり、まだ一般論は封印します。代わりに、「うーん、どうでしょうかねえ」「難しいかもしれないですねえ」と、のらりくらりと否定的であることを匂わせ、相手の出方をうかがいます。

それでも食い下がってくるなら、「私一人では判断が難しいご相談です」「今ここでお答えすることができないご相談です」「持ち帰って、全体の会議で検討します」と伝えて一旦終了とします。そして、次の面談でやんわりだめだったと伝えます。そうすると、「時間と人数をかけた」「それでも難しかった」というメッセージが伝わり、より相手に受け入れやすくなります。

もちろん、実際に「全体の会議で検討する」必要はないです。会議をしたというメッセージが相手に伝われば十分です。

b. 受け流す

2つ目は、受け流すことです。例えば、「今ここで決めていただくことができないのですか?」「先生じゃ頼りないです」と挑発的に迫られた場合、「だめなものはだめです」と言って、熱くならないことです。むしろ、「困りました」「情けないです」「苦しいです」と受け流します。たとえ「時間通りに患者を診れないんですか?」「それでも医者ですか?」と怒鳴られたとしても、熱くならず、「はい…面目ない…」としんみり答えます。

1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームで、佐倉は「おい、責任者出せよ」と迫られ、すぐに篠崎に代わるシーンがあります。あとで篠崎は、「責任者と代われと言われて、そう簡単に代わらない」「あくまでも自分が責任者だという態度で対応する」「ただし自分で責任をとるって絶対に言っちゃいかん」「責任を持って伝えます」「ここ最重要ポイント」と佐倉に指導します。

責任者をすぐに出さない理由は、もちろん動じないことを示すためです。そして、そもそも責任者は当事者ではないので、状況がよく分からず、逆に混乱を招くリスクもあるからです。

c. 受け止める

3つ目は、受け止めることです。例えば、「研修医の態度が悪い」「説明が分かりにくい」と抽象的な正論を振りかざす場合、「そんなことはないです」と反論しないことです。

逆に、「おっしゃる通りです」「ご指摘は大変に勉強になりました。ありがとうございます」と受け止めます。「その研修医にはしっかり言い聞かせ、今後に生かすよう、十分に指導して参ります」とも言えます。抽象的なことを話し合っても、結論は出ないです。話し合いに乗るのは、具体的な要望に限定します。具体性のないクレームは、実は適当にあしらうことができるのです。

もちろん、その研修医に確認をとって態度に問題がなければ、「しっかりと言い聞かせる」必要はないです。厳重注意したというメッセージが患者に伝われば十分です。

d. 話を聞くだけで済む問題にする

このように、時間をかける、受け流す、受け止めるという3つのポイントを押さえた受け身のステップをまず踏むと、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。

つまり、話を聞くだけで済む問題に持ち込むことです。逆にこれを十分にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には話を聞くだけで済む問題ではなくなります。たびたび押しかけてきたり、具体的な対応策などを書面で求められるなど執拗なクレームに発展するリスクが高まります。

また、受け身のステップでも言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、話を聞いたことにはならなくなるからです。

e. 病院へのクレームに応用すると

この対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身のステップを経ても、納得されない場合です。「予約システムがそもそもおかしい」「医者の数を増やすべきだ」「急患も順番を待つべきだ」とその患者から言われたら、どうしましょう?

従来は、つい「予算的に無理です」「人道的にだめです」といきなり一般論で反論していたでしょう。そうではなく、「『医者を増やす』『急患も順番を待つ』という貴重なご意見をありがとうございます」「今後に上層部に進言してみたいと思います」と伝えることです。患者は、自分の意見が上層部まで取り上げられると思い、まんざらでもないと思うでしょう。

f. 受け身のステップの時間は?

ただし、受け身の時間は、1時間以内で3回までを目安とします。ポイントは、延々と話し合いをしない、つまりある一定期間には終わらせることです。よって、一定期間を過ぎても、相手が納得しない場合は、最終ステップに進みます。

(3)突き放すー捨て身
らっきょうの瓶に虫が入ってたという3つ目のクレームに対して、佐倉は、お客様相談室の室長から「訪問謝罪の場合は、手みやげのほかに一律2万円お渡しする決まりです」と言われ、「それってたかってくれって言ってるようなもんじゃないですか!?」とびっくりして言います。実際に、佐倉と篠崎は、訪問謝罪に伺った時、客から「きっちり詫び入れるまで、帰さねえから覚悟しとけよ」と恫喝されます。

確かに、営利のビジネスの現場なら、客の過剰なクレームでも、返品交換、クーポン券、サービス券、優待券、航空機のシートのアップグレード、そして和解金を渡すなどできる限りの特別扱いして、顧客満足度を上げるのも1つのやり方でしょう。逆に、特別扱いをしてもしなくても、客が納得しないなら、取引中止や出入禁止にするなどして、それ以上相手にしないのも1つのやり方でしょう。

しかし、医療、学校、役所などの公的機関は違います。なぜなら、公的機関は、公平性と公共性があるからです。公平性の観点から、優遇するなど特別扱いはできないです。また、公共性の観点から、広く開かれて誰でも利用できることが前提で、相手にしないわけにはいかないです。では、どうしましょうか?

3つ目のステップは、先ほどまで築いてきた関係は損なわれるとしても突き放す、つまり捨て身です。ようやくこのタイミングで、要望に応えることが難しいと伝えます。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。

a. 限界を示す

1つ目は、限界を示すことです。例えば、役所で「特例として認めてください」、病院で「あの研修医をクビにしてください」と無理難題を吹っかけてくる場合、「私どもにもできることとできないことがあります」「役所(または病院)の方針として」「社会通念上」「役所(または病院)の最終決定として」「総合的な判断によって」「対応が難しいです」「お気持ちはごもっともですが」「こちらとしても残念ですが」「私たちも決まりに従わなければなりません」「何とぞご理解いただけますようよろしくお願いします」などと伝えます。

なお、限界を示すメッセージのポイントは3つあります。1つ目は、組織として公正・公平の原則に則った社会規範に従っており、相手も自分もルールを守るという意味では、同じ立場にあることです。つまり、ここでようやく、これまで封印していた一般論を解禁できます。2つ目は、組織として十分に検討した結果であることです。つまり、決定の根拠には組織のほかのメンバーの賛同があるということです。3つ目は、組織としての最終決定であることです。つまり、話し合いは終わりであるということです。

b. 取り合わない

2つ目は、取り合わないことです。例えば、「この事実をSNSで拡散させますよ」と悪評をほのめかしたり、「人権委員会に訴えます」「警察に通報します」と脅し文句で迫ってくる場合、「それは残念です」「ご納得いただけないのはとても残念です」「ただ、私どもがとやかく言える立場ではありませんので、致し方ないです」などと伝えます。

逆に、事を荒立てたくない余りに、「それだけは止めてください」と言うと、どうなるでしょうか? 言うことを聞くと言う流れになってしまいます。すでに、こちらとしては、社会通念上のベストを尽くしたわけですので、怯えることはないです。ここは「暖簾に腕押し」「糠に釘」の、のらりくらりのスタンスで行きましょう。

c. お引き取り願う

3つ目はお引き取り願うことです。例えば、「分かりましたというまで、帰りません」と居座る場合、「お引き取りください」「これ以上は業務の支障になり、困ります」と伝えます。たとえ「私のことより、業務が大事なんですか?」と言い返されたとしてもです。それでも居座る場合、「これ以上のお話ですと、しかるべき対応をとらざるを得ないと考えております。ただ、本意ではございませんので、何とぞご理解をいただけると助かります」などと警察への通報をほのめかして警告します。こう言われて帰らない人は普通じゃないです。もし帰らないなら、本当に警察へ通報するべきです。ちなみに、3回言っても、従わない場合は、刑法の不退去罪が成立します。よって、居座りに付き合う必要は全くないです。なお、居座りを事前に回避する策としては、話し合いの終了の時間を、先ほどの提案書で事前に決めて、記載しておくことです。

ただし、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)の場合、「どなたかほかのご家族といっしょに再度お越しいただけますでしょうか?」と伝え、話の分かる人を介することもできます。それが難しい場合、もちろん警察保護という流れになります。

また、ケースとしてはまれですが、「あなたバカなんですか?」「土下座してください」「死んだら!」と暴言を吐いたり、大人数で押しかけてくるなど恫喝をしてくる場合、「とても怖いです」と伝えます。そして、できるだけ多くのスタッフを集めて、立ち会ってもらいます。暴力のリスクもあるため、数で圧倒して、安全を確保する必要があります。

ちなみに、暴言を繰り返す場合は刑法の脅迫罪、土下座の強要は強要罪が成立します。

逆に、何とかその場を収めようとして、「まあまあまあ」となだめたり、言われるままに土下座をすると、どうなるでしょうか? 言うことを聞くという流れになります。絶対に、恫喝の手に乗らない冷静さも必要です。

なお、暴言や大人数での押しかけによる恫喝を事前に回避する策として、2つあります。1つは、複数体制です。3人が理想です。1人目は直接の対応、2人目は記録係、3人目は控えで、いざという時に人を呼ぶ係です。もう1つは、相手の参加人数の制限を、先ほどの提案書で事前に決めておくことです。例えば、「部屋の大きさの都合上、参加人数は3人までです」と記載します。

最後に、いきなり怒鳴り込んできた場合はどうしましょうか? まず、人を呼び、速やかに場所を変えることです。決してその場で話を始めない、つまり一人で丸腰で臨むことは避けます。これは、恫喝への対応と同じ理屈です。

そして、やるべきことは、同僚たちで本人を取り囲んで、面会室や応接室までの移動の数分間に、歩きながら「お忙しい中わざわざすいませんねえ」「こんなお天気が悪い日に良くない日にわざわざ」などと無関係な雑談をすることです。

このように、興奮してる人には本題をそらして親身のステップをまず滑り込ませます。こうして、場所と話題を変える場面転換によって、クールダウンを図ります。そうするのは、一時的に興奮してしまっただけの場合もあるからです。

ただし、それでも興奮が治まらない場合や最初から酔っ払っている場合、「今日のところはお引き取りください」「日を改めましょう。次回にこのアンケートに記入の上、ご持参ください」と伝えます。時間を変える場面転換もします。それでも、帰らない場合は、先ほどの警察へ通報の流れになります。なお、大声を上げる、机を叩く、ドアを蹴る場合は、刑法の威力業務妨害罪が成立します。

ちなみに、電話対応の場合も窓口対応と基本的に同じです。「これ以上の対応が難しいので、一旦電話は切らせていただきます。それでは失礼致します」と伝えて電話を切ります。なお、電話対応のメリットは、録音機能を付けることができる点です。「サービス向上のため」という理由付けをして、多くの企業では採用されています。録音されているという状況は客観性を生むので、こちら側も言葉を慎重に選び、お互いが冷静に話し合いをすることができるでしょう。

何より、「言った、言わない」の水掛け論はなくなります。録音アナウンスの存在を知らせるだけで、クレーム電話が減ったとの報告もあります。

d. 手詰まり感に持ち込む

このように、限界を示す、取り合わない、お引き取り願うという3つのポイントを押さえた捨て身のステップを最後に踏むと、「得したい」「コントロールしたい」と思っている人も、完全に納得に至らないにしても、「どうしようもない」とあきらめて引き下がります。つまり、手詰まり感に持ち込むことです。これが、落としどころです。

また、親身と受け身のステップで言ってはいけないとした一般論は、捨て身のステップでは、十分に言うべきことに変わります。

e. 病院へのクレームに応用すると

この対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身と受け身のステップを経ても、納得されない場合です。「待たされて具合が悪くなった。慰謝料払ってください」とその患者からしつこく言われたら、どうしましょう? 先ほどの限界を示す決まり文句を言いましょう。ちなみに、慰謝料や迷惑料の要求をする場合は、刑法の恐喝罪が成立します。

f. 捨て身のステップの時間は

ただし、捨て身の時間は、1時間以内で最後で1回のみとします。ポイントは、最終的な結果を伝えるだけですので、もはや話し合いの余地はないことです。


断るスキルとは?                                                                   

ところで、みなさんの中には、最初から毅然とした態度で接していないと、クレームがエスカレートしてしまうという懸念を持たれている方はいませんか? 確かに、毅然とした態度は、国際空港の税関なら良いでしょう。取り締まるだけのところだからです。しかし、病院、学校、役所は、取り締まるだけのところではないです。サービスを始めコミュニケーションを続けるところでもあります。

進化心理学的に言えば、人間が、ほかの動物と決定的に違うことは、相手のクレームを受け入れたり断ったりしながら、協力関係を築くこと、つまり社会脳を進化させたことです。その社会脳によって、高度な社会を築き、文明を発展させました。そして、昨今のコミュニケーションに重きを置かれる社会では、クレーム対応に、コミュニケーション能力の集大成が求められるとも言えるでしょう。

もっと言えば、クレーム対応をはじめとする断るスキルで重要なことは、まずこちらが相手の気持ちに寄り添いつつ、揺さぶられても動じない、時として最終的にはその協力関係は損なわれるとしても突き放すという押し引きのバランス感覚であると言えるでしょう。まさにこれが、親身、受け身、捨て身のステップです。


「神様からひと言」とは?
重役会議のシーンでは、毎回「お客様の声は神様のひと言」との社訓を一斉に唱えています。ラストシーンの重役会議では、佐倉は、名店とされるラーメン店の味をそのままカップ麺にしようとする安易な会社の方針に疑問を持っていました。そんな佐倉は、重役たちに「本店に行って参りました」「(出されたラーメンが)恐ろしくまずい」「今のは、私の率直な感想です」「純粋に金を払った客としての正直な気持ち」「いわば『神様からのひと言』です」と言い放ちます。

「神様からひと言」とは、まさに「神様」の視点で自分自身を俯瞰して見ることとも言えるでしょう。その時に導かれる「ひと言」をよく理解した時、私たちは、より良いクレーム対応、そしてより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか?



参考文献

1) 神様からひと言:萩原浩、光文社文庫、2005
2) クレーム対応「完全撃退」マニュアル:援川聡、ダイヤモンド社、2018
3) 小心者でもサラリとかわせる「断る」心理テクニック:内藤誼人、ゴマブックス、2006

2018年12月5日水曜日

ゴーン氏「退任後報酬による起訴」で日産経営陣が陥る“無間地獄”

ゴーン氏「退任後報酬による起訴」で日産経営陣が陥る“無間地獄”
郷原信郎  | 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

 前回の記事【検察の「組織の論理」からするとゴーン氏不起訴はあり得ない】で述べたとおり、検察の「組織の論理」からすると、ゴーン氏に対する検察の処分は「起訴」以外にあり得ない。

 しかし、一方で、マスコミの報道で概ね明らかになっているゴーン氏の事件の逮捕容疑には重大な疑問があり(【ゴーン氏事件 検察を見放し始めた読売、なおもしがみつく朝日】)、その後の報道によって事実関係が次第に明らかになるにつれて、疑問は一層深まっている。ゴーン氏を本当に起訴できるのか、と思わざるを得ない。

ゴーン氏の逮捕容疑についての重大な疑問
 これまでの報道を総合すると、ゴーン氏の「退任後の報酬」についての事実関係は、概ね以下のようなもののようだ。

ゴーン氏は、2010年3月期から、1億円以上の役員報酬が有価証券報告書の記載事項とされたことから、高額報酬への批判が起きることを懸念し、秘書室長との間で、それまで年間約20億円だった報酬のうち半額については、退任後に退職慰労金やコンサルタント料等の名目で支払う旨の「覚書」を締結し、その後も毎年、退任後の支払予定の金額を合意していた。この「覚書」は、秘書室長が極秘に保管し、財務部門にも知らされず、取締役会にも諮られなかった。秘書室長が、検察との司法取引に応じ、「覚書」を提出した。

 ここで問題になるのは、(ア)退任後の支払いが確定していたかどうか、(イ)有価証券報告書等への記載義務があるのか、(ウ)(仮に記載義務があるとして)記載しないことが『重要な事項』に関する虚偽記載と言えるか(金融商品取引法197条では、「重要な事項」についての虚偽記載が処罰の対象とされている)、の3点である。

 (ア)の「支払いの確定」がなければ、(イ)の記載義務は認められないというのが常識的な見方であり、マスコミの報道も、本件の最大の争点は(ア)の「支払いが確定していたかどうか」だとしているものが大半だ。

 しかし、一部には、(ア)の「支払いの確定」がなくても、(イ)の記載義務があるというのが検察の見解であるかのような報道もある。確かに、有価証券報告書の記載事項に関する内閣府令(企業内容等の開示に関する内閣府令)では、「提出会社の役員の報酬等」について

報酬、賞与その他その 職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度 に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったものをいう。

とされている。検察は、それを根拠に、未支払の役員報酬も「受ける見込みの額」が明らかになれば「支払いの確定」がなくても記載義務があるとの前提で、ゴーン氏が秘書室長との間で交わした「覚書」によって、退任後に受ける役員報酬の見込みの額が明らかとなったのだから、(イ)の記載義務がある、と考えているのかもしれない。

「見込みの額」は「重要な事項」には該当しない
 しかし、(イ)の記載義務があるとしても、その記載不記載が、(ウ)の「重要な事項」についての虚偽記載にただちに結びつくものではない。

 有価証券報告書には、投資家への情報提供として様々な事項の記載が求められているが、そのうち、虚偽の記載をした場合に犯罪とされるのは「重要な事項」に限られる。これまで、「重要な事項」についての虚偽記載として摘発の対象になったのは、損益、資産・負債等の決算報告書の内容が虚偽であった場合に限られている。それらは、記載の真実性が特に重視され、監査法人などによる会計監査というプロセスを経て有価証券報告書に記載されるものであり、「重要な事項」に該当するのは当然である。

 それに対して、役員報酬の額は、会社の費用の一つであり、総額は決算報告書に記載されるが、それとは別に、2010年から、高額の役員報酬の支払は、有価証券報告書に記載して個別に開示すべきとされた。個別の役員の報酬が、会社の利益と比較して不相当に高額である場合には、会社の評価に影響する可能性があり、投資判断に一定の影響を与えると言える。しかし、この個別の役員報酬の記載は、会計監査の対象外であり、報酬額が、会社の利益額と比較して不相応に過大でない限り「重要な事項」には該当しないと考えるべきであろう。

 ましてや、支払うことが確定していない将来の支払いであれば、実際に支払われた役員報酬より、投資判断にとって重要性がさらに低いことは明らかだ。上記の内閣府令を根拠に、「受ける見込みの額が明らかになった」ので記載義務はあると一応言えたとしても、投資家の判断に影響する「重要な事項」とは言えないことは明らかであり、それについて虚偽記載罪は成立しない。

最大の争点は「退任後の報酬の支払が確定していたか否か」
 結局のところ、ゴーン氏の逮捕容疑に関する最大の争点は、「将来支払われることが確定した」と言えるかどうかに尽きる(マスコミ報道でもその点を最大の問題点と捉えている)。

 検察は、ゴーン氏が、毎年の報酬を20億円程度とし、10億円程度の差額を退任後に受け取るとした文書を、毎年、会社側と取り交わしていたことや、ゴーン氏に個別の役員報酬を決める権限があったことなどを重視し、退任後の報酬であっても将来支払われることが確定した報酬で、報告書に記載する必要があったと判断したと報じられている。要するに、役員報酬の金額は、2010年3月期以前も、それ以降も約20億円と変わらず、単に「支払時期」だけが退任後に先送りされたと解しているようだ。

 しかし、ゴーン氏に「退任後に支払うこととされた金額」は、単に「支払時期」だけではなく、その支払いの性格も、支払いの確実性も全く異なる。

 上場企業のガバナンス、内部統制を前提にすれば、総額で数十億に上る支払いを行うためには、稟議・決裁、取締役会への報告・承認等の社内手続が当然に必要となる。秘書室長との間で合意しただけで、財務部門も取締役会も、監査法人も認識していないというのであるから、ゴーン氏の退任後に、どのような方法で支払うにせよ、社内手続を一から行う必要がある。

 報道によれば、検察は、「ゴーン氏に個別の役員報酬を決める権限があったこと」を強調しているようであり、それを「支払いの確定」の根拠だとしているのかもしれない。しかし、「退任後の報酬支払い」を秘書室長と合意した時点では、ゴーン氏が自らの役員報酬を決める権限を有しており、約20億円の役員報酬を受け取ることも可能だったとしても、その一部の報酬の支払いを「退任後」に先送りしてしまえば、話は全く違ってくる。退任後に、コンサルタント料などの名目で支払うことについて社内手続や取締役会での承認を得る段階では、既に退任しているゴーン氏に決定する権限はないのである。

 実際に、今回の事件での逮捕の3日後に代表取締役会長を解職され、取締役も解任される可能性が高まっているゴーン氏が、「先送りされた役員報酬」の支払いを受けることができるだろうか。

 年間約20億円の役員報酬だったのが、2010年以降、約半分の金額となり、残りは「退任後の支払い」に先送りされたことで、「支払時期を先送りした」だけではなく、確実に支払いを受ける金額は半額にとどまることになった。ゴーン氏の意思で、残りの半額については、支払いの確実性が低下することを承知の上で、退任後に社内手続を経て適法に支払える範囲で支払いを受けることにとどめたということであろう。

「退任後の報酬の支払いの確定」と整合する日産側の対応
 結局のところ、日産の執行部や財務部門も認識しておらず、取締役会にも諮られていない以上、支払いの確実性は確実に低下しているのであり、日産という会社とゴーン氏との間で、役員報酬の「支払いが確定した」とは到底言えない。したがって、それを有価証券報告書に記載しなかったことが虚偽記載罪に当たらないことは明らかだ。

 しかし、それでも、検察は、「組織の論理」から、ゴーン氏を起訴するであろう。

 検察は公判で、「退任後の報酬の支払いが確定したものであること」を立証しなければならない。そうなると、今後の日産側の対応が極めて重要になってくる。

 ゴーン氏の不正に関する社内調査結果を検察に持ち込んだ西川社長以下の日産現経営陣は、これまで検察との間で「緊密な連携」をとってきたはずだ。検察がゴーン氏を起訴すれば、その後も、検察の主張を裏付けるために協力することになるだろう。

 「ゴーン氏への退任後の報酬支払いが確定したもので、それが投資判断に影響する重要事項であるのに、有価証券報告書等に記載しなかった」という検察の主張を肯定するのであれば、日産経営陣は、重要な事項について虚偽の有価証券報告書等を提出して投資判断を誤らせたことに対して対応しなければならない。それに伴い、様々な是正措置をとることが求められたり、サンクションを受けることになるが、そこには、日産経営陣にとって耐え難い困難が待ち受けている。

 第1に、毎年、支払いを合意した時点で「退任後の報酬の支払いが確定した」というのであれば、それぞれ時点で「引当金」を計上する必要があったことになる(「引当金」とは、将来の特定の支出や損失に備えるために、貸借対照表の負債の部に繰り入れられる金額)。

 検察の起訴事実を肯定するのであれば、2010年3月期に遡って引当金計上を行うべきだったと認めることになり、「過年度決算の訂正」が必要になる。訂正額が2010年3月期の10億円から始まり、毎年10億円ずつ増加し、2018年3月期が80億円に上るとすると、訂正金額の総額は360億円に上ることになる。しかも、2016年3月期以降は、CEOとして有価証券報告書等の作成提出の責任者は、ゴーン氏ではなく西川社長である。過年度決算の訂正の責任は西川社長が全面的に負うことになる。

 第2に、このような「過年度決算の訂正」を行い、しかも、その訂正の総額が360億円にも上るということになると、日産は、有価証券報告書等の重要事項の虚偽記載で課徴金納付命令を受けることになる。日産の直近5年間の社債による資金調達は、子会社を含めると国内だけで7000億円を遙かに超えるので、金額の高くなりやすい募集・売出し時の有価証券届出書の虚偽記載が認められた場合には、社債の場合で資金調達額の2.25%であるから、課徴金額は、2015年の東芝の約74億円を抜き、過去最高額となる可能性がある。

 そして、第3に、日産は、臨時取締役会でゴーン氏の会長及び代表取締役を解職しており、さらに、臨時株主総会で取締役も解任する方針を明らかにしているが、「ゴーン氏の退任」が現実化した場合、ゴーン氏へ「退任後の役員報酬」を支払うべきかどうかという問題に直面する。検察が主張するとおり、「退任後の報酬」について合意の時点で支払いは確定しており、単に「支払時期が退任後に後送りされているだけ」だとすれば、日産側は、ゴーン氏退任の際に支払わなければならないことになる。また、退任後の役員報酬自体が「違法」とされたのではなく、開示しなかったことが違法とされているのだから、「違法な役員報酬は支払わない」という理由での支払いの拒絶もできない。日産側の経営判断で支払わないとすれば、「支払は確定していた」という前提を否定する重要な間接事実となる。

 有価証券報告書等の虚偽記載で起訴された前経営者に、巨額の退任後報酬を支払うなどということは、株主には到底理解されない。しかし、検察の主張と整合性をとろうと思えば、ゴーン氏への約80憶円の支払いを拒絶することは容易ではないのである。

検察のゴーン氏起訴で西川社長らは“無間地獄”に
 検察がゴーン氏を起訴し、西川社長以下の日産の経営陣が、検察の起訴と整合する対応をしようとすると、(1)退任後の役員報酬支払についての過年度決算の訂正、(2)過去最高額の課徴金の支払い、(3)ゴーン氏への80億円の役員報酬の支払、という「株主に対する背信行為」を次々とこなしていかざるを得ない。

 しかも、「社内手続も取締役会の報告・承認も行われていないにもかかわらず、コンサルタント料の支払等の名目での支払いは確定していた」という明らかに合理性を欠く報告を行った上、引当金計上、課徴金納付命令受け入れという、株主にとって明らかに不利な決定を、ルノー出身の取締役を含む取締役会で決定しなければならないのである。

 そして、退任後の報酬の支払いが確定していたと認めて引当金を計上し、課徴金納付命令まで受けた後、もし、ゴーン氏の刑事事件で、検察の主張が排斥され無罪判決が出た場合には、西川社長らは、個人としての損害賠償責任を会社に対して負担することにならざるをえない。

 ゴーン氏の起訴後に検察に協力するとすれば、西川社長以下日産経営陣は、まさに「無間地獄」とでも言うべき苦難に直面することになるのである。

2018年12月1日土曜日

5つの上手な怒り方

 激怒とはいわないまでも、急いでいるときに限って電車が遅延したり、多少なりとも日常でいらいらした経験は誰しもあるのではないだろうか。こうした感情を自らコントロールし、コミュニケーションを改善するアンガーマネジメントの手法は、1970年代に米国で誕生した。

「激怒」から「激おこぷんぷん丸」まで怒りに関連する語彙はさまざま
 蓮沼氏は、ワークショップ形式でアンガーマネジメントについて講演した。 この1週間で「すごく頭にきたこと」「まあまあ腹が立ったこと」「軽くいらいらしたこと」を書き出せるだろうか。同氏によると、自分の怒りを言語化できない人は「怒りやすい」傾向があるという。怒りを表現する言葉には、激怒、憤怒、立腹、鬱積が爆発する、むしゃくしゃする、憤慨する、怒りをぶちまける、激おこ、激おこぷんぷん丸など、さまざまなものがある。

 しかし怒りに関する語彙力が少ないと、①怒りをうまく表現できない②怒りの強度が高くなりやすい③何に対してどの程度怒っているのかが分からなくなる―などの弊害が生じる。その結果、原因不明で適切に対処されない怒りの情動が周囲に伝染し、怒りの連鎖をもたらす。自分に原因はないのに怒りの矛先が向けられてしまうのは、まさにこのパターンといえるだろう。

アンガーログの勧め
 蓮沼氏は「怒りは、パワーバランスで立場の強い人から弱い人に流れる性質がある」と指摘する。また前編で紹介した思考のコントロールについては、家族や同じ診療科といった身近な人間関係ほど、「○○すべき」という相手に求める理想が高く、相手にその境界線から外れた言動を取られると怒りが強くなる性質がある。

「全ての人が自分の感情に責任を持つことができれば、怒りの連鎖は断ち切れると考える」と同氏は述べ、自分の怒りを知ることの重要性を挙げた。具体的には、どんなときに、何に対して、どの程度の怒りが生じたのかを記録(アンガーログ)し、怒りの傾向やパターンを把握することで、怒りに対する解決策を導き出す。

5つの上手な怒り方とは?
 上手な怒り方とはなにか。怒ることが前提だが、指摘するのは相手の言動であり、人格・性格・能力ではない。その上で蓮沼氏は、5つの上手な怒り方を挙げた(表)。

表. 上手な怒り方

伝えるときの主語は「あなた」でなく、「私」にする
過去の話を持ち出さない (現在の問題に限定する)
自分の要望を含めて、簡潔に伝える
「ちゃんと」「しっかり」「少し」など、程度言葉を使わない
低いトーンで話すスピードを落とし、ゆったりした仕草で伝える
(蓮沼氏の講演を基に編集部で作成)

 まず、伝える内容の主語を「私」にすること。つい「あなたのせいで私は怒っている」という言い方をしがちだが、これでは批判と応酬の構図になるため、「私はこう感じている」というように主語を自分にする。

 次に、「あのときもこうだった」など、過去の話を持ち出さないこと。また簡潔に伝えることを心がけ、単に指摘するだけでなく「今後はこうしてほしい」という改善案も示すことが望ましい。

 また、「ちゃんとやってよ」「しっかりやってよ」「少し早めにして」など、具体性に欠ける程度を表す言葉は自分と相手で基準が異なるため、同じ状況を繰り返すことになる。「ちゃんとやってと言ったよね」「だからちゃんとやったよ」といった水掛け論にならないようにするには、内容を具体的に伝える。

 さらに、言語以外の手段を活用することも1つの手段だという。高い声のトーンで早口で話したり、腕組みをしながら話したりすると、相手は責められていると誤解してしまう。そこで、話すときは低いトーンで、話すスピードを落とす、ゆったりした仕草に変えるなどの非言語手段を用いることも有効とされている。

感情は行動に引っ張られる
 怒るふりをしていると次第にいらいらしてきたり、笑っているとなぜか自然に楽しくなったりするように、人の感情は行動に引っ張られるようだ。つまり、日ごろからリラックスしたような柔和な表情をつくることや、言葉遣いに気を配るだけで、不要な怒りをコントロールできるという。

 また、怒った際には「どうしてできなかったのですか」「なぜ期限に間に合わなかったのですか」など、相手を責めるような質問をしてしまうことも少なくない。こうした過去型・否定型質問を是正する手法として、「どうしたらできますか」「できるようにするにはどうしたらよいですか」という未来型・肯定型質問がある。これは近年、自発的な行動を支援するコーチングでも導入されている。

 最初は漠然とした大まかな未来型・肯定型質問でも、複数回にわたってオープンな対話を繰り返す中で、具体的な怒りの解決策が見えてくるという。

自分と他者は別個人との理解を
 蓮沼氏は今回、怒りの対処法として怒りの性質を理解することの重要性を挙げ、怒りの背景に潜んでいる一次感情や怒りの境界線の把握について紹介した。それと同時に「家族を含め、自分と他者は全く異なる人格と価値観を持った別個人である」と指摘。「怒りの性質を把握するためには、本当の意味で自分と他者とは別個人であることを理解する必要がある」と強調した。

アンガーマネジメント

どんなに怒り(アンガー)の沸点が高い人であっても、社会生活の中で怒りを感じない人はいないだろう。そうした感情を抑え切れずに増幅した怒りを相手にぶつけてしまい、社会的地位を失った著名な政治家やスポーツ選手の事例は枚挙にいとまがない。

そもそもアンガーとはなにか?
 アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育・心理トレーニングのことで、1970年代に米国で自動車運転中のトラブルから射殺事件にまで発展するケースが続いたことをきっかけに誕生したとされる。

 「アンガー」というと激怒した状態を連想しがちだが、いらいらやもやもやした感情なども含まれる。また怒りはマイナス感情と捉えられがちだが、本来は危険な状態から心身の安全を守るための自己防衛反応であり、人間にとって必要な感情なのだ。蓮沼氏は「アンガーマネジメントとは、怒らないようにすることではなく、怒る必要がない場合は無駄にいらいらせず、怒る必要がある場合には適切な感情表現ができるようにすることである」と解説した。

スケールで怒りの傾向を自己評価
 怒りで問題になるのは①強度が高い(ささいなことでも激高する)②持続性がある(根に持つ)③頻度が高い(常に怒っている)④攻撃性がある(他人や自分を傷つける、物に当たる)―である。

 そこで蓮沼氏は、怒りの感情に関する自分の傾向と対策を把握するツールとして、感情が穏やかな状態を0、制御不能な怒りを10とするスケールテクニック(図1)の記入を勧めた。

図1. 自分の怒りの傾向を把握するスケールテクニック

イライラ・怒りの温度(点数)をはかる.jpg

 また同氏は、怒りは「不安である」「つらい」「寂しい」などのネガティブな一次感情があふれたときに表出する二次感情であると指摘。その考え方は、患者と医療者間での意見の食い違いの解消を対話で導く医療メディエーションにも取り入られていると紹介した。例えば、予約したのに1時間も待たされたと怒る患者の背景には、「いまだに診断が付かない」「症状が取れない」「担当医と相性が悪い」といった一次感情があると考えて対処する。

6秒間待てば怒りに任せた言動は回避できる
 アンガーマネジメントで必要なのは、①衝動②思考③行動―のコントロールである。

 まず①について、衝動的な言動は怒りが発生してから6秒以内に起こるとされており、蓮沼氏は「6秒間待つことで "言わなければよかった"と後悔するような、怒りに任せた言動を抑えられる」と述べた。意識すると意外に長く感じる6秒間をやり過ごす方法として、その場から離れて一度クールダウンを図る、自分を落ち着かせるような言葉があれば唱える、真っ白な紙をイメージして思考停止するなどを紹介した。

怒りの引き金になる「○○すべき」の許容範囲を広げよう
 ②の思考については、自分の理想や願望、欲求を象徴する「○○すべき」の境界線を広げることを提示した。

 蓮沼氏によると、怒りは自分の中にある「病院はこうあるべき」「研修医はこうあるべき」「夫はこうあるべき」という理想が現実で裏切られたときに生じるという。例えば、自分の考える「会議に集まるべき時間」が開始10分前である場合、5分前ではぎりぎりであり、開始時間とほぼ同時であれば怒りの対象になる。しかし、乖離の程度が小さければ許容範囲に収まることから、同氏は「○○すべき」と「少し違うが許容範囲」の境界線を徐々に広げる思考のコントロール法が役立つとした(図2)。

図2. 思考のコントロール(三重丸)

【タイトルあり】三重丸/思考のコントロール.jpg

 ただし、一度怒りの許容範囲を決めたらその許容をはっきりと示して安定させないと、周囲が混乱し気分屋と見なされることがあるため、注意が必要だ。また、ここでいう「○○すべき」は個人の価値観であり、患者を対象とした医療関係者としてのプロフェッショナリズムはまた別の話であろう。

コントロールできないことは受け入れて怒りを回避しよう
 怒りは、自分でコントロールが可能なものと不可能なもの、さらにその出来事が重要なものとそうでないものの4つに分類できる(図3)。これが③の行動のコントロールである。

図3. 行動のコントロール(分かれ道)

【タイトルあり】分かれ道/行動のコントロール.jpg

 これらのうち問題となるのは、自分でコントロールできない事態への怒りである。それが自分にとって重要な場合(院内の人間関係、大事な会議に向かう途中の渋滞や天候による交通の乱れなど)は、変えられない現実を受け入れた上で今できる行動を探す。重要でない場合(車内のマナー違反、家族が服を脱ぎっ放しにした、ごみが片付けられないなど)は、前述の②思考のコントロールに基づき、放置する・気にしないなどの行動変容を試みる。

 以上から蓮沼氏は「怒っている人をコントロールすることはできない」と指摘した上で、前述した怒っている相手の一次感情を考慮したり、『○○すべき』や境界線を明確にするなど、怒りの正体を知ることで具体的な解決策が見えてくることがある」と述べた。